2019 年 39 巻 2 号 p. 160-168
心筋細胞のカルシウム動態(Ca2+ハンドリング)は,活動電位波形や心筋収縮にも密接に関係し,イオンチャネルやトランスポーターなどのさまざまな影響を受けるため,遺伝性不整脈疾患においても,Ca2+ハンドリングの異常は致死性不整脈の発生に強く関係している.QT延長症候群やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍においては交感神経の緊張が催不整脈的に,Brugada症候群においては交感神経の緊張は不整脈抑制に作用している.一方で心不全においては,細胞内のCa過負荷や電気的な非同期性収縮によって,Ca2+ハンドリング異常を生じ,収縮性の低下につながっている.特に,左室非同期性心不全(dyssynchronous heart failure)においては,左室内で収縮が遅れる側壁側においてCa2+ハンドリング異常が顕著であり,両室ペーシングによる心室再同期療法(CRT)によって電気的なズレが改善すると,Ca2+ハンドリング異常も改善を認めた.このようにCa2+ハンドリング異常は心筋細胞の興奮・収縮連関において非常に重要な意味をもっており,それらを理解することで致死性不整脈の発生や心不全の成因を解明し,新たな薬物治療の重要な標的となることが期待される.