2020 年 40 巻 1 号 p. 16-25
心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)は,重症心不全患者において同期不全を有する低左心機能患者に対する治療オプションの一つである.心エコー図検査による同期不全の視覚的特徴として,septal flash,apical shuffle motionと呼ばれる特徴的な左室の異常運動があり,いわゆる“見た目”での収縮様式の異常からCRT導入のスクリーニングができる.また,心エコー図検査では左室リードが固定される後壁や側壁の心筋の性状・収縮の評価も可能であり,CRTの効果を予測することができるうえ,リード位置の変更など再考の一助になりうる.植込み後は,同期不全の消失,左室径・容量,収縮能を評価することもまた重要である.さらに右心系の評価も重要であり,右室の収縮能指標の一つである三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)の低下や肺高血圧の存在はCRT後の予後不良予測因子であり,心エコー図検査での評価が重要になる.本稿では,実臨床における心エコー図検査のCRT前後の評価における重要性と評価のポイントについて,術前,術後に分けて説明していきたい.