2022 年 42 巻 2 号 p. 97-102
J波が心室細動(ventricular fibrillation:VF)発症と関連することが判明し,注目を集めている.本稿では,再分極説に基づきJ波の成因を解説する.2008年にHaïssaguerreらは,“早期再分極(J波)を呈する症例のなかに,VFを発症するリスクの高い症例が少なからずいる”ことを示し,「早期再分極症候群(early repolarization syndrome:ERS)」という疾患概念を提唱した.一過性外向き電流(transient outward current:Ito)は活動電位1相で急速に流れる外向き電流であり,オーバーシュート直後のノッチを形成する.Itoは心外膜で電流量が多く,心内膜では少ない.この心外膜から心内膜にかけての貫壁性電位勾配が大きいと,J波が顕著になる.Itoの不活性化からの回復が遅い際は,徐脈時にJ波は増高する.J波がVFを生じる機序としては,“phase 2 reentry”が有力である.自験例(30代後半のVF既往ERS患者)で,心血管作動薬の投与に対するJ波の反応を観察した.プロプラノロールおよびベラパミルはJ波振幅を増高させた.これは内向きCa電流(ICa)抑制効果で説明可能と思われた.一方,イソプロテレノールはJ波振幅を減高・消失させた.これはICa増強および心拍数増加にともなう二次性のIto抑制によるものと思われた.