2022 年 42 巻 2 号 p. 88-93
心電図上のQRS波とSTセグメントの接合部はJ点と呼ばれ,これが波形成分になるとJ波と呼ばれる.J波は健常な若年男性に多く認める予後良好な心電図所見とされてきたが,J波に起因する特発性心室細動が報告されて以後,にわかに注目されることとなった.J波を示す心電学的な病態は,これまで早期再分極症候群と呼ばれることが多かったが,J波自体が早期再分極波であるのか遅延脱分極波であるのか,結論が出ていない現在,広くJ波症候群と呼ばれる.J波は低体温,電解質異常,心筋の虚血や炎症などの病態で認められる.J波症候群とは単一の病態ではなく,心室筋の一部の脱分極遅延もしくは再分極の早期化により出現したJ波がさまざまな誘因で顕在化,不安定化して心室細動が発症する,複雑で多因子的な病態であるため,リスクの層別化が重要である.