心電図
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42 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 岡村 祥央, 小野原 優子, 越智 秀典, 徳山 丈仁, 大久保 陽策, 池内 佳裕, 宮内 俊介, 宮本 翔伍, 魚谷 悠希未, 茶山 一 ...
    2022 年 42 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2022/06/14
    公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    心房細動中の心拍数は個人差が大きく,その規定因子は房室結節の伝導特性や自律神経系の関与が報告されているが,その他の因子については解明されていない.今回われわれは持続性心房細動のカテーテルアブレーションを行った患者を対象とし,心房細動患者の心拍数に関与する遺伝的要因について検討した.ゲノムワイド関連解析で報告された洞調律中の心拍数との関連を認めた21の遺伝子多型とホルター心電図で得られた24時間総心拍数を調査したところ,ギャップジャンクションの構成蛋白であるコネキシン43をコードするGJA1遺伝子多型(rs1015451)マイナーCアレルが独立した心房細動における心拍数上昇因子であることがわかった.また,GJA1遺伝子多型マイナーCアレルを有する症例は心房内伝導速度が速く,心房細動の周期長が短いこともわかった.GJA1遺伝子多型(rs1015451)は難治性頻脈性心房細動を予測する,新たな遺伝子マーカーとなる可能性がある.

症例
  • 橋本 健司, 小林 道浩, 掛川 匠, 鈴木 耕太, 根岸 壮親, 都築 一平, 関 雄太, 井部 進, 山下 皓正, 三山 寛司, 藤澤 ...
    2022 年 42 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2022/06/14
    公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    65歳男性.持続性心房細動に対する初回アブレーションを施行した.両側肺静脈(PV)および左房後壁の同時隔離であるBOX隔離を試みたが,左房とBOX内の伝導は残存した.食道温上昇により通電が不十分であったため,Bottom line上に早期性のある電位に対し追加通電すると,洞調律中および冠静脈洞(CS)ペース中の両側PVの興奮順序は同一となった.両方向性のアクチベーションマップを作成すると,BOX外であるCSペースではBOX内の最早期興奮部位は左上PV内前壁であったが,BOX内であるPVペースでは左房の最早期興奮部位は左下PV下方の後側壁であった.マーシャル静脈(VOM)に2Fr電極カテーテルを挿入し,BOX内ペースを行うとVOM電位はCS電位に先行していた.つまり,BOX内,VOM,CSの順で興奮が伝導しており,Marshall Bundleを介した心外膜側の伝導が想定された.BOX内の最早期興奮部位である左上PV前壁を通電したところ,肺静脈後壁同時隔離が完成した.左房と肺静脈間のMarshall Bundle伝導が想定された症例を経験した.

連載 不整脈学研究ノススメ
  • 原田 将英
    2022 年 42 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2022/06/14
    公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    臨床研究は新しい診断・検査・治療法の有効性,安全性,妥当性の確認が主な役目である.一方,基礎研究は疾患の病態解明と新たな治療標的や治療戦略の提唱がその役目である.したがって,病態に基づいたテーラーメード医療の実現には,臨床研究と基礎研究の両者のトランスレーショナルな思考が求められる.しかし,日本の不整脈学の現状においては,特に基礎研究のトレーニングを受ける環境や機会が失われつつある.本連載,「不整脈学研究ノススメ」は若手の医師に対して基礎研究への興味を抱いていただけるように企画された.第2回目となる本稿では,臨床データから推察できる分子・細胞・組織レベルでの変化について概説し,臨床研究と基礎研究との相互フィードバックの思考の重要性について述べる.

連載 今さら聞けない心電図波形塾
  • 丸山 徹
    2022 年 42 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 2022/06/14
    公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    心電図上のQRS波とSTセグメントの接合部はJ点と呼ばれ,これが波形成分になるとJ波と呼ばれる.J波は健常な若年男性に多く認める予後良好な心電図所見とされてきたが,J波に起因する特発性心室細動が報告されて以後,にわかに注目されることとなった.J波を示す心電学的な病態は,これまで早期再分極症候群と呼ばれることが多かったが,J波自体が早期再分極波であるのか遅延脱分極波であるのか,結論が出ていない現在,広くJ波症候群と呼ばれる.J波は低体温,電解質異常,心筋の虚血や炎症などの病態で認められる.J波症候群とは単一の病態ではなく,心室筋の一部の脱分極遅延もしくは再分極の早期化により出現したJ波がさまざまな誘因で顕在化,不安定化して心室細動が発症する,複雑で多因子的な病態であるため,リスクの層別化が重要である.

心電学フロンティア2021(第55回理論心電図研究会)「心電図異常波形の成因に迫る」より
  • 髙橋 尚彦
    2022 年 42 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2022/06/14
    公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    J波が心室細動(ventricular fibrillation:VF)発症と関連することが判明し,注目を集めている.本稿では,再分極説に基づきJ波の成因を解説する.2008年にHaïssaguerreらは,“早期再分極(J波)を呈する症例のなかに,VFを発症するリスクの高い症例が少なからずいる”ことを示し,「早期再分極症候群(early repolarization syndrome:ERS)」という疾患概念を提唱した.一過性外向き電流(transient outward current:Ito)は活動電位1相で急速に流れる外向き電流であり,オーバーシュート直後のノッチを形成する.Itoは心外膜で電流量が多く,心内膜では少ない.この心外膜から心内膜にかけての貫壁性電位勾配が大きいと,J波が顕著になる.Itoの不活性化からの回復が遅い際は,徐脈時にJ波は増高する.J波がVFを生じる機序としては,“phase 2 reentry”が有力である.自験例(30代後半のVF既往ERS患者)で,心血管作動薬の投与に対するJ波の反応を観察した.プロプラノロールおよびベラパミルはJ波振幅を増高させた.これは内向きCa電流(ICa)抑制効果で説明可能と思われた.一方,イソプロテレノールはJ波振幅を減高・消失させた.これはICa増強および心拍数増加にともなう二次性のIto抑制によるものと思われた.

  • 淀川 顕司
    2022 年 42 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2022/06/14
    公開日: 2022/06/24
    ジャーナル フリー

    心電図でのT波は,心室の興奮消退(再分極)を反映しており,活動電位持続時間に較差が生じる状態や心室興奮伝播の変動の影響を受け,陰性・2相性・平坦化等,様々に変化する.心電図T波の変化は,一次性変化と二次性変化に分類される.一次性変化は,心筋虚血や心筋梗塞,心肥大などの病態に伴って心室の各部で活動電位持続時間に較差が生じる状態で認められるT波変化である.一方,二次性変化は,心室期外収縮や脚ブロック,WPW症候群などでみられる心室興奮伝播の変化に基づくST-T波形変化である.臨床的に重要なのは,高カリウムや心筋梗塞急性期におけるT波増高,肺塞栓における陰性T波,虚血性心疾患における2相性・陰性T波,肥大型心筋症・脳血管障害やたこつぼ型心筋症に伴う巨大陰性T波である.疾患・病態ごとのT波の特徴をおさえておくことが重要である.

臨床心電図解析の実際―どこをどうみるか―
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