2023 年 43 巻 1 号 p. 58-65
QRS時間の延長は脚ブロックなどの心室内伝導障害だけでなく,副伝導路症候群や心室不整脈など,様々な病態で目にする.12誘導心電図のQRS波形を読み解くことで,心室内刺激伝導系の遅延伝導部位や副伝導路の局在,および心室不整脈の起源を評価することが可能であり,正常心電図を含めたQRS波形を理解することが重要である.さらに背後に隠れている基礎心疾患の鑑別も重要であり,特に心室内伝導障害や心室不整脈の原因にはサルコイドーシスのような早期治療介入により心筋障害が改善する疾患も存在する.QRS時間の延長は独立した予後不良因子であり,特に左脚ブロックに関しては心臓再同期療法などの治療介入により,積極的にQRS時間の短縮を目指す必要がある.また副伝導路症候群や心室不整脈に対しては,症例ごとにカテーテルアブレーションや植込み型除細動器の適応を検討すべきである.