心電図
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43 巻, 1 号
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Editorial
総説
  • 中瀨古(泉) 寛子, 千葉 浩輝, 佐塚 文乃, 後藤 愛, 布井 啓雄, 神林 隆一, 松本 明郎, 武井 義則, 諫田 泰成, 内藤 篤 ...
    2023 年 43 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2023/04/04
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー

    ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞(ヒトiPS細胞由来心筋細胞)の単純二次元細胞シートを多電極プローブ上に作成し,電気ペーシング下で電気生理学的指標を連続記録した状態で薬物を曝露すると,催不整脈リスクおよび抗不整脈作用を検出できる.また同細胞シートの電気刺激位置を工夫すると,生理的な陽性階段現象,すなわち「正の収縮速度-頻度関係」を表出でき,薬物による収縮弛緩運動の変化の評価系としても利用可能である.同細胞シートの収縮速度を十分に引き出すには,プローブに接着した細胞シート中央部が辺縁部へ引き寄せられるという物理的条件を考慮し,中央付近の最大弛緩領域に電気刺激位置を設定することで,興奮伝導,収縮および弛緩運動の開始地点と伝播方向を一致させることが重要である.この発見は心臓再同期療法への応用も期待できる.

  • 吉田 聡, 李 鍾國
    2023 年 43 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2023/04/04
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー

    徐脈性不整脈の治療は人工ペースメーカ植込みがゴールドスタンダードであるが,感染症や非生理的ペーシングによる心不全増悪などの合併症を引き起こすことがあるため,新規治療法開発が期待されている.徐脈性不整脈に対する遺伝子治療や細胞治療の研究は現在も進められており,イオンチャネルを制御することで作業心筋の自動能を上昇させ,ペースメーカ機能をもつ細胞へと変化させる方法や,幹細胞由来拍動細胞を左心室に移植することで接合部調律と同程度の異所性興奮を生じさせる方法が報告されている.このように,バイオペースメーカ開発が進む一方で,房室ブロックで生じた房室伝導障害の修復に関してはいまだ報告が少なく,その電気生理特性解析に関しても確立したものがない.そこでわれわれは,生体由来心筋細胞と同じ動物種由来の,iPS細胞由来心筋細胞によるin vitro細胞移植評価プラットフォームを構築し,心臓伝導障害に対する再生治療法の可能性を探求した.これまでに報告された徐脈性不整脈に対する遺伝子治療・細胞治療法と併せて報告する.

原著
  • 徳留 大剛, 小和瀬 晋弥, 藤原 菜実, 鈴木 穣, 伊藤 浩一, 浅野 駿逸, 長田 淳
    2023 年 43 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2023/04/04
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー

    心臓再同期療法(以下,CRT)において冠状静脈(以下,CV)の解剖を術前に把握しておくことは重要である.われわれは以前より単純CTでCVを直接同定し,手動で描出を行っているが,CV分枝の描出は困難なことも多い.そこで,心外膜脂肪(以下,Fat)とCVの関係に着目しFatを描出することでCVの解剖学的評価ができる新しい方法(以下,Fat描出法)を考案し,その正確性について評価を行った.CRT植込みを行った52人に対し,単純CTからCV本幹とFat描出法によりCV分枝を描出した.描出されたCV分枝は部位別に前壁,側壁,後壁と3つに分類し,植込み術中に行われたCV造影と比較し,正確性を3段階(grade1:末梢まで描出,grade2:途中まで描出,grade3:描出不能)で評価した.植込み対象となるCV分枝は前壁で21本,側壁で26本,後壁23本の計70本.前壁ではgrade1が8本(38.1%),grade2が5本(23.8%),grade3が8本(38.1%),側壁ではgrade1が14本(53.8%),grade2が4本(15.4%),grade3が8本(30.8%).後壁ではgrade1が15本(65.2%),grade2が6本(26.1%),grade3が2本(8.7%)だった.Fat描出法はFatの存在に依存するが,CV分枝を正確に描出可能である.

症例
  • 滝川 正晃, 合屋 雅彦, 池ノ内 孝, 清水 悠輝, 雨宮 未来, 鎌田 龍明, 西村 卓郎, 田尾 進, 宮﨑 晋介, 笹野 哲郎
    2023 年 43 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2023/04/04
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    心房細動アブレーションに関連する心房頻拍(AT)は,しばしばマクロリエントリーを機序とし,とりわけ,肺静脈,僧帽弁輪,三尖弁輪を解剖学的障壁として旋回する.それゆえ,解剖学的障壁間の線状焼灼は,これらのATを治療する上で不可欠である.Differential pacingを用いたブロックラインの確認は,心房粗動に対する,三尖弁-下大静脈間峡部の線状焼灼の完成度を評価する方法として報告されたが,他の線状焼灼の完成の有無の確認にも応用される.しかしながら,高解像度のマッピングで,Differential pacingではブロックラインの完成を20~30%で誤診してしまう可能性が報告されている.オムニポーラー技術を用いると,3つの単極電極と直行する2つの双極電極からなるクリックという単位において,360°の心内電位から最適な電位を選択し,Activation Vectorとしてリアルタイムに表示することが可能である.今回本機能を用いて,線状焼灼の完成をリアルタイムに評価するのに成功した1例を経験したので報告する.

Letter
連載 不整脈学研究ノススメ
  • 笹野 哲郎
    2023 年 43 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2023/04/04
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー

    不整脈学・心電学は,精緻な現象論の積み重ねを中心とした臨床不整脈学と,基礎電気生理学・分子生物学・遺伝学等による基礎研究から発展してきたといえるが,近年は圧倒的に前者にその比重が置かれている.不整脈学のさらなる発展や,大きなブレイクスルーを得るためには,病態メカニズム解明の基礎研究と,それを発展させたトランスレーショナル研究の試みは重要である.トランスレーショナル研究を進めるには,コンセプトの検証に加え,実用化のための技術開発や実証研究のフィールドの確保などの準備も必要になる.

連載 今さら聞けない心電図波形塾
  • 岡村 祥央, 中野 由紀子
    2023 年 43 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2023/04/04
    公開日: 2023/04/07
    ジャーナル フリー

    QRS時間の延長は脚ブロックなどの心室内伝導障害だけでなく,副伝導路症候群や心室不整脈など,様々な病態で目にする.12誘導心電図のQRS波形を読み解くことで,心室内刺激伝導系の遅延伝導部位や副伝導路の局在,および心室不整脈の起源を評価することが可能であり,正常心電図を含めたQRS波形を理解することが重要である.さらに背後に隠れている基礎心疾患の鑑別も重要であり,特に心室内伝導障害や心室不整脈の原因にはサルコイドーシスのような早期治療介入により心筋障害が改善する疾患も存在する.QRS時間の延長は独立した予後不良因子であり,特に左脚ブロックに関しては心臓再同期療法などの治療介入により,積極的にQRS時間の短縮を目指す必要がある.また副伝導路症候群や心室不整脈に対しては,症例ごとにカテーテルアブレーションや植込み型除細動器の適応を検討すべきである.

研究会レポート
臨床心電図解析の実際―どこをどうみるか―
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