2024 年 44 巻 4 号 p. 231-240
細胞内カルシウム(Ca)濃度の上昇は,心不全に関連する心室不整脈(VA)の原因となるが,ミトコンドリア(mit)へのCaの取り込みが,心不全患者のVAに与える影響は明らかにされていない.そこで,mitへのCa取り込みの促進が,細胞内Ca濃度とVAに与える影響を検討した.心筋梗塞後心不全モデルマウスを使用し,ケンペロール(Kaemp)によってmitへのCaの取り込みを促進した.蛍光顕微鏡でCaウェーブを,共焦点レーザー顕微鏡でCaスパークを,穿孔パッチクランプ法で活動電位を観察した.VAの誘発性は,ランゲンドルフ灌流心と浸透圧ポンプでKaempを投与したマウスで評価した.Kaempは,Caウェーブ,Caスパーク,活動電位の回数を減少させ,VAの発生を抑制した.Kaempは,細胞内Ca濃度の上昇を代償し,VAを抑制する可能性が示唆された.MitへのCa取り込み能を促進する治療戦略は心不全におけるVAへの新たな選択肢になることが期待される.