2025 年 45 巻 2 号 p. 103-110
症例は63歳男性.X−3年に心肺停止で搬送され,蘇生後に右冠動脈#3へ緊急経皮的冠動脈形成術を施行した.X年に心房頻拍が認められ,レートコントロールに難渋したため,高周波カテーテルアブレーションの方針となった.電気生理学的検査では,頻拍周期234msの心房頻拍が誘発され,3Dマッピングシステムではfigure of eight reentrant tachycardiaのactivationパターンが得られた.左房下壁の峡部付近は低電位領域であり,exit siteでの心房entrainment pacingによるpost pacing intervalは頻拍周期+6msであった.同部位を心房頻拍中に焼灼したところ,即座に停止した.左房下壁が低電位領域になった原因検索を行うと,X−2年の冠動脈造影では右冠動脈から分岐する左房枝が低電位領域になった左房近傍を走行しており,X年の心電同期冠動脈造影CT検査では他の同等の冠動脈側枝が残存しているにも関わらず,その左房枝が消失していたことが明らかになった.以上のことから,左房下壁に低電位領域を形成した要因の一つとして,心停止時の冠動脈血流低下や動脈硬化病変の進行によって心房梗塞が起こったものと推測した.