抄録
房室結節リエントリー性頻拍症 (AVNRT) において, リエントリー回路に心房筋が関与しているか否か議論の多いところである。
我々は, 心房筋, 心室ともリエントリー回路に関与しないと考えられるAVNRTを経験したので報告する。すなわち, 心房早期刺激法にて房室結節二重経路が証明され, 著明なAH時間の延長と共に頻拍が誘発された。潜在性副伝導路は否定され, AVNRTの診断基準を満足した。AVNRT中に種々の連結期の心房期外収縮を作成し, 心房エコー波に対する影響を検討した。頻拍周期370~380msecにおいて連結期285~365msecの間で心房エコー波は期外収縮に対し完全代償性休止期をもち, しかも期外収縮により房室結節近傍の下位右房の捕捉も認められたことより, 心房筋はリエントリー回路に関与せず, 房室結節内にupper common pathwayが存在すると考えられた。さらに若干の文献的考察, 治療上の問題点についても述べた。