抄録
発作性心房細動 (PAF) 群46例および対照群85例を対象に, PAF例の心房筋の臨床電気生理学的特性を洞調律時右房内マッピングおよび心房期外刺激法で検討した.洞調律時の右房内12点の心房電位波形の検討結果は, (1) 各症例における心房電位の最大幅, 最多棘波数は, PAF群で有意に大で (P<0.01) , この二つの指標は正相関した (r=0.76) . (2) 異常電位を, 電位幅100msec以上あるいは棘波数8以上とすると, PAF群に有意に多く出現し, sensitivity70.0%, specificity78.6%, positivepredictivevalue70.0%であった. (3) PAFの異常電位は右房内の高位, 中位, 低位の順に多く分布し, 特に, 高位の後壁で最も多く記録された.心房期外刺激法による指標の検討結果は, (1) Repetitive Atrial Firing (RAF) , Fragmented Atrial Activity (FAA) , Intra-atrial Conduction Delayの出現率はPAF群で対照群よりも有意に大であった. (2) RAF+FAA (max.dA幅50%以上) の組み合わせを検査陽性とすると, sensitivity62.5%, specificity81.5%, positive predictive value62.5%であった.以上の所見は, PAFの心房筋の電気生理学的特性を示し, PAFの予知や薬効評価の指標となりうると考えられる.