抄録
持続性洞結節内リエントリー性頻拍 (以下SNRT) が誘発された3例の内1例で, 刺激伝導系の病理組織学的所見を検討した.洞結節および洞結節と心房の境界には, 広汎に高度な線維化が認められ, 心房全体にも, 心筋の脱落, 肥大, 線維増成を認めた.しかし洞結節動脈には有意な狭窄は認められなかった.次に雑種成犬で, 非開胸下に, カテーテルを用いて寒天ゲルを右冠動脈に注入し, 右室, 右房梗塞を作成し, 作成2週後に右房早期刺激を加えたところ, 12頭の内1頭で再現性をもって, 持続性のSNRTが誘発された.病理組織学的に検討したところ, 洞結節動脈は寒天ゲルで完全に閉塞し, 洞結節および心房筋には広汎な線維化と変性が認められた.以上より, SNRTは, 洞結節および周囲心房筋の広汎な病理組織学的変化に伴って発症する可能性が示唆された.
心房内リエントリー性頻拍 (ART) および心房粗動 (AF) の一部の例は, 心房内にリエントリー回路をもつと考えられているが, 我々は, ARTとAFとの相互移行を認めた例を経験した.この例では, ARTとAFとの相互移行は, 心房内の“リエントリー回路の乗り換え”で説明できると考えられた.