抄録
ヒトの心房粗動 (AFL) の成立機序は, macroreentry路を旋回するリエントリーによることが強く示唆されているが, microreentry機序も完全には否定しえない.著者らは, 両者の機序を鑑別すべき電気生理学的所見の検討を行ってきたが, その際, 『AFL中, ある心房部位の4極電極カテーテルの遠位2極よりペーシングを行うと, そのインパルスは離れた心房記録部位をまず捕捉し, 最後に (最も近接する) 同一電極カテーテルの近位2極の記録部位を, 長い伝導時間の後, 捕捉する』という奇異な現象を観察した.この現象は, 検査を行った31例のAFL症例中, 11例, 14ヵ所のペーシング部位でみられた.本現象は, microreentry機序では説明不可能であり, macroreentry機序, すなわち, 4極電極カテーテルが, たまたま, AFLのmacroreentry路にきわめて近接する部位に留置されたためにみられた現象であるという仮説によって説明可能であると考えられた.