1990 年 10 巻 4 号 p. 417-424
洞結節および房室結節に対するCa拮抗剤の効果については多くの研究があるが, 下位自動能に対する効果についてはいまだ不明の点も多い.今回我々は14頭の犬に電気的Ablationを行い, 完全房室ブロックを作製し, 無麻酔下に各種Ca拮抗剤の効果を検討した.
最初に9頭の犬でverapamil (0.4mg/kg) の効果を観察したところ, QRSレート (Rレート) は静注1~2分後に42±14% (平均±SD) の最大増加率を示し, Pレートは1分後が最大で平均29%の増加を示した.さらに別の5頭では, 薬物学的神経遮断を行い, verapamilのほか, diltiazem0.4mg/kg, nifedipine15μg/kgの効果についても調べた.除神経後のRレートはいずれのCa拮抗剤を用いても30%程度の有意な増加を示した.一方, 除神経後のPレートはverapami1, diltiazemでは有意に減少し, nifedipineでは大きな変化が認められなかった.以上の成績からCa拮抗剤によるRレートの増加は, 交感神経作用のほか, Ca拮抗剤そのものの作用も顕著に関与することが示唆される.