A-Hブロック (A-HB) とヒス束内ブロック (BHB) で捕捉収縮と補充収縮のQRS波形を比較検討した.ヒス東電位図検査で診断されたA-HB19例, BHB28例, 計47例を対象とし, 捕捉収縮と補充収縮のQRS波形が同じであった例を同一群, 何らかの変化を認めた例を変化群とした.変化群はA-HB7例 (36.8%) , BHB20例 (71.4%) に認められ, BHBで高頻度であったが, A-HBでも従来考えられているより高率であった.BHBではQRS波形の変化群が同一群に比し有意に高齢で, 捕捉収縮の記録時から補充収縮の記録時までの期間が長い傾向にあった.また, 同一群と変化群で補充収縮の心拍数に有意差を認めなかった.
QRS波形の変化した原因として, 本研究では, 徐脈による影響は否定的で, BHB例の一部では経時的変化による影響が加わっている可能性が示唆されたが, pacemaker shift, 自律神経系の影響など他の要因の関与も考えられた.また, BHBで補充収縮のQRS波形が正常化する場合には, ヒス東内の機能的縦解離が原因となっている例も認められた.