抄録
心電信号は, 心臓から体表までの容積導体中の伝達過程で影響を受ける可能性がある.したがって心電信号の詳細な検討に際しては, この影響を考慮した誘導法の選択が重要と考えられるが, 基礎的検討は少ない.そこで著者は, FFTを用いて心電信号の周波数成分に対する容積導体の影響を調べた.結果: (1) 心臓の近接部 (V4) と遠隔部の周波数強度の比をとると, 遠隔部では75Hz付近より低域, 特に20~40Hz付近を中心とした減衰を認め, dipを形成した. (2) このdipは遠隔部ほど深く, その周波数帯域は近接部より遠隔部でより低域であった.以上より, 遠隔部より導出した信号は, 容積導体の通過に際して周波数帯域により異なる減衰を受けるものと考えられた.よって心室遅延電位などの微小心電信号の検出や周波数成分の解析など, 心電信号を詳細に検討する際には, 容積導体の影響を考慮する必要があると考えられた.