抄録
Romano-Ward症候群1例に対して安静時および運動負荷時の体表面心電位図を施行し, また本症に対する交感神経の役割をI123-metaiodobenzylguanidine (MIBG) 心筋シンチグラムを用いて, これらについて検討した.安静時では体表面心電位図にQT延長は認められるものの, QRS, T波等電位図および面積マップは正常であり, MIBGの心室内分布もほぼ均一であった.一方, 運動負荷時には体表面心電位図にて側胸部を除き胸壁全体に広範なT波の逆転を認め, MIBGは左室側壁領域により多く集積した.以上より, 本例では安静時のQT延長は心室各所における心筋興奮持続時間が生理的較差を保ちながら, ほぼ均一に延長しているためと考えられ, 一方, 運動負荷時には心室各所に対する交感神経作用の不均一性, 再分極過程の不均一化が生じ, これがT波の異常に直結する可能性が示唆された.