抄録
心室再分極異常はしばしば重篤な不整脈と関連し, 体表面心電図では従来「QT延長」と表現される.しかしT波の終点の決定が曖昧なまま扱われているという問題がある.本研究ではT波とU波を厳密に区別して再分極過程の体表面心電図上の諸指標を設定し, 健常群 (15名) においてIa群抗不整脈薬投与前後で比較した.さらにTorsades de Pointes (TdP) 群 (8名) においてTdP発生時と非投与時とで比較した.健常群では, Ia群抗不整脈薬投与によりQaTc (QRSの始まりからT波の頂点までの時間をBazett's formulaで補正) が有意に延長し, その変化度はキニジン血中濃度と相関した.したがってQaTcの延長は通常の薬理学的な反応と考えられた.TdP群では, U-amp (U波の振幅) が有意に増大した.すなわち, 異常時 (TdP発生時) の変化の特徴はU波の増大であり, これがT波とU波の融合をもたらしている.