抄録
心筋細胞はさまざまな生理的, 非生理的条件下において機械的刺激を受けやすい組織である.特に, 洞結節細胞は伸展刺激によって陽性変時作用を示すことが知られているが, その機序に関する詳細な検討はなされていない.今回は, 家兎単一洞結節細胞を用いて伸展刺激に伴う電位および電流の変化を検討した.単一洞結節細胞にパッチ電極を用いてwhole-cell voltage clampを行ない, 電極を介した伸展刺激を加えると, 時間非依存性の膜コンダクタンス増大が認められた.この電流の逆転電位はClの平衡電位に従うことからC1電流であると確認された.洞結節細胞の活動電位は伸展刺激により, 膜電位の脱分極とともに心拍数の増大が認められ, 電流変化もClの平衡電位と一致したため, 伸展誘発性Cl電流が伸展刺激に伴う陽性変時作用の一機序として関与する可能性が示唆された.