心電図
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14 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 曽我部 正博, 宮津 基, 井上 真寿美, 大木 隆史, 川久保 隆
    1994 年14 巻1 号 p. 3-11
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心臓に対する容量負荷 (伸展刺激) は自動能の促進, 収縮力の増大, 不整脈, ANP分泌, 心肥大などを誘起する.細胞レベルでも活動電位の修飾やNa+, Ca2+の流入量増大, あるいはタンパク質やmRNAの産生促進などが知られている.一方, 血流や血管伸展による機械刺激は, 血管内皮細胞からの血管作動性物質の分泌, 形態変化, 増殖能などを修飾する.残念ながらその分子機構は未解明である.しかし最近, 心・血管系の細胞に膜伸展に応じて活性化される-群のイオンチャネル (SAチャネル) が発見され, 機械刺激から細胞応答へいたる分子力スケードを解明する糸口の一つがみつかった.ここでは心筋と血管内皮細胞のSAチャネルを中心に, 最近の話題と問題点を概説する.
  • 萩原 誠久, 松田 直樹, 坂井 理映子, 笠貫 宏, 細田 瑳一
    1994 年14 巻1 号 p. 12-17
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋細胞はさまざまな生理的, 非生理的条件下において機械的刺激を受けやすい組織である.特に, 洞結節細胞は伸展刺激によって陽性変時作用を示すことが知られているが, その機序に関する詳細な検討はなされていない.今回は, 家兎単一洞結節細胞を用いて伸展刺激に伴う電位および電流の変化を検討した.単一洞結節細胞にパッチ電極を用いてwhole-cell voltage clampを行ない, 電極を介した伸展刺激を加えると, 時間非依存性の膜コンダクタンス増大が認められた.この電流の逆転電位はClの平衡電位に従うことからC1電流であると確認された.洞結節細胞の活動電位は伸展刺激により, 膜電位の脱分極とともに心拍数の増大が認められ, 電流変化もClの平衡電位と一致したため, 伸展誘発性Cl電流が伸展刺激に伴う陽性変時作用の一機序として関与する可能性が示唆された.
  • 児玉 逸雄, 新井 章子, 外山 淳治
    1994 年14 巻1 号 p. 18-23
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    伸展刺激による洞結節自動能亢進の機序を細胞膜の伸展感受性イオンチャネル (stretoh-sensitive ohannel) の関与の観点から検討した.ウサギ心臓から摘出した洞結節組織片にmechanical stimulatorを用いて0.3~2.0gの機械的伸展を5秒間加えると伸展張力に応じた自発興奮頻度の増加が生じた.この自動能亢進反応は伸展活性Cl-チャネルの阻害薬であるDNDS (5mM) やSITS (1mM) 作用下では有意に減弱した.一方, 伸展活性陽イオンチャネルの阻害薬であるgadoliniumや, ATP感受性K+チャネル阻害薬のglibenclamide, lfチャネル阻害薬のCs+は伸展刺激に対する自動能亢進反応に影響を及ぼさなかった.以上の結果より, 伸展活性Cl-チャネルが洞結節自動能の制御に重要な役割を果たすことが示唆された.
  • 立川 洋一, 清末 達人, 有田 眞
    1994 年14 巻1 号 p. 24-31
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    機械的伸展に伴う心筋細胞内Ca2+動態の変化を解析し, そのメカニズムについて考察した.新生児ラットの心室筋細胞を無蛍光シリコンラバーに培養し, このラバーを手動マニピュレータで伸展させることにより細胞に機械的伸展を加え, この際の細胞内Ca2+濃度 ( [Ca2+] i) をFura-2蛍光強度比として測定した (温度22~24℃) .ラット培養心室筋細胞の持続的伸展に伴う [Ca2+] iの変化には, 伸展直後 (30秒~2分) の一過性かつ高度の増加 (初期相) と, 定常状態における (5~10分) 軽度の増加 (後期相) の2相が認められた.初期相の形成には, ガドリニウムにより抑制される伸展活性化イオンチャネルが関係した細胞外からの一過性Ca2+流入増加が関与していると推定された.後期相には, Ca2+チャネルおよびガドリニウムにより抑制される伸展活性化チャネルを経由しない, 細胞外からの持続的なCa2+流入の増加が関与しているらしい.
  • 古川 哲史, Robert J. Myerbury, 平岡 昌和
    1994 年14 巻1 号 p. 32-41
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は肥大心に高頻度に認める不整脈の発生の背景となるイオン電流変化と, その機序を明らかにする目的で慢性左室圧負荷の心筋イオン電流系に与える影響を検討した.腹部大動脈を部分的に狭窄し, 圧負荷を加えた左心室から単離した心筋細胞では活動電位幅が延長し, そのプラトー相のamplitudeが低下していた.Ica, Lはsham-operation群・aorta-banding群で有意な差を認めなかった.IKの末尾電流はaorta-banding群で有意に減少しており, この減少はIKの非常に速く活1生化される成分 (IKP) , および比較的速く活性化される成分 (IKr) を抑制したことが主体であった.一方, Itoを認める細胞の出現頻度は増加しており, その4-AP感受性成分・Ca2+感受性成分の大きさは各膜電位で増大していた.IKの減少は肥大心筋に認める活動電位幅の延長を, Itoの増大は活動電位プラトー相のamplitudeの低下を反映するイオン電流変化と考えられる.
  • 宍戸 稔聡, 大黒 哲, 野々木 宏, 相原 直彦, 大江 透, 土師 一夫, 下村 克朗
    1994 年14 巻1 号 p. 42-48
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    陳旧性心筋梗塞症 (MI) 165例を対象に, 体表面加算平均心電図上の心室遅延電位 (LP) と長期予後について検討した.LPは対象患者の41例 (25%) に検出された.平均4.4年の観察期間中, 心室頻拍および心室細動はLP陰性群で6例 (5%) , LP陽性群で20例 (49%) にみられた.Cathetera blationなどの侵襲的治療はLP陰性群で1例 (1%) , LP陽性群で11例 (27%) に施行された.突然死および不整脈死はLP陰性群で2例 (2%) , LP陽1生群で9例 (22%) に発生した.生存曲線を用いた検討では, 不整脈事故発生率はMI発症後1年で, LP陰性群は4%であるのに対し, LP陽性群では24%と高率であった (p<0.01) .心事故発生率はMI発症後1年で, LP陰性群2%であるのに対し, LP陽性群では15%と高率であった (p<0.05) .突然死および不整脈死はMI発症後5年で, LP陰性群の1%に対してLP陽性群で8%と高い傾向にあった (P=0.08) .以上より, MI症例におけるLPは不整脈死を含む不整脈事故の予知に有用であると考えられた.
  • 内山 博英, 相沢 義房, 鷲塚 隆, 北沢 仁, 高橋 和義, 草野 頼子, 内藤 直木, 宮島 武文, 池主 雅臣, 柴田 昭
    1994 年14 巻1 号 p. 49-57
    発行日: 1994/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    (目的) 植込み式除細動器 (ICD) の除細動試験時における誘発から通電時までの不整脈の変化と通電成績を, 体表面心電図と心腔内電位の所見から解析し, 試験成績の有する問題点を検討した.
    (対象と方法) ICDの適応症例は治療が困難でショックをきたす持続性心室頻拍 (VT) 2例, 心室細動 (Vf) 4例 (男5例, 女1例, 平均年齢55.7歳: 陳旧性心筋梗塞2例, 拡張型心筋症1例, 特発性3例) であり, 検討には心腔内電位と体表面心電図ともに1誘導ずつを用いた.
    (結果) (1) 31回の除細動試験での誘発時の心電図所見は多形性VTが16回, Vfが15回であり, 誘発後, 通電までに多形性VTから単形性VTへの変化が4回, Vfから多形性VTへの変化が3回生じた. (2) 通電は単形性VTに対して4回 (13%) , 多形性VTに対して15回 (48%) , Vfに対して12回 (39%) 行なわれた.成功率は90% (28回) で, 単形性VT100%, 多形性VT93%, Vf83%であり, 多形性VTとVfの除細動閾値が異なる可能性が示唆された. (3) 心腔内電位上の持続電位は体表面心電図のVf移行より約2秒遅れて出現したが, これは誘導数がかぎられているためと考えられた.
    (結語) (1) 除細動試験時, 通電の半数以上は多形性VTに対して行なわれていた. (2) 多形性VTとVfの除細動閾値は異なる可能性が示唆された.
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