抄録
(目的) 植込み式除細動器 (ICD) の除細動試験時における誘発から通電時までの不整脈の変化と通電成績を, 体表面心電図と心腔内電位の所見から解析し, 試験成績の有する問題点を検討した.
(対象と方法) ICDの適応症例は治療が困難でショックをきたす持続性心室頻拍 (VT) 2例, 心室細動 (Vf) 4例 (男5例, 女1例, 平均年齢55.7歳: 陳旧性心筋梗塞2例, 拡張型心筋症1例, 特発性3例) であり, 検討には心腔内電位と体表面心電図ともに1誘導ずつを用いた.
(結果) (1) 31回の除細動試験での誘発時の心電図所見は多形性VTが16回, Vfが15回であり, 誘発後, 通電までに多形性VTから単形性VTへの変化が4回, Vfから多形性VTへの変化が3回生じた. (2) 通電は単形性VTに対して4回 (13%) , 多形性VTに対して15回 (48%) , Vfに対して12回 (39%) 行なわれた.成功率は90% (28回) で, 単形性VT100%, 多形性VT93%, Vf83%であり, 多形性VTとVfの除細動閾値が異なる可能性が示唆された. (3) 心腔内電位上の持続電位は体表面心電図のVf移行より約2秒遅れて出現したが, これは誘導数がかぎられているためと考えられた.
(結語) (1) 除細動試験時, 通電の半数以上は多形性VTに対して行なわれていた. (2) 多形性VTとVfの除細動閾値は異なる可能性が示唆された.