抄録
糖尿病患者の自律神経障害は患者の「生活の質」を損なうばかりではなく, 合併する他疾患の経過および予後に重大な影響を及ぼし, 時に突然死をもたらす.糖尿病患者60例を進行度別に軽症群, 中等症群, 進行群の各20例に分け, 健常者60例を対照として, ホルター心電図心拍変動スペクトル解析にて比較検討した.1.糖尿病軽症群では副交感神経指標HF値が対照群に比し有意に低下していた (9±1 vs 11±1 msec, p<0.05) .昼間の副交感神経指標の低下が主因であった.一方, 交感神経指標LF/HF値は対照群に比し高い傾向があった (1.8±0.1 vs 1.7±0.1, p=0.08) .従って, 副交感神経機能は交感神経に先んじて障害され, 交感神経機能はこの時期相対的に亢進していると推測された.2.糖尿病進行群では交感, 副交感指標共に低下し, より除神経状態に近づいていると考えられた.これらの自律神経障害の特徴を把握することは, 日常診療において重要と考えられる.