医療技術の進歩とともに、退院後も人工呼吸器や胃ろうなどの医療サポートを必要とする「医療的ケア児」の数は増大しているが、彼らの就学支援は一向に進んでいない。24時間体制の医療的ケアを必要とする以外には心身の障害がなく、日常生活に全く支障をきたさない例も多い医療的ケア児にとって、その心身の状態に応じた教育機会を奪われることは甚だしい権利の侵害である。 本稿では、医療的ケア児の就学を阻む要因を分析し、教育機関への看護師配置の遅れ以外にも、医療的ケア児を支援すべき法律が逆に彼らの受け入れを拒否する教育機関に免罪符を与えている現状に注目する。そして英米の「インクルーシブ教育」に対する数十年にわたる真摯な取り組みを参考にしながら、日本には法の成立をゴールと捉える傾向があり、法の不備を絶えず是正することで理想に近づく姿勢が欠如していることを指摘し、我が国が今後取るべき施策について提案を行う。