抄録
負荷心電図で有意なST低下を示し, 冠動脈に有意狭窄を有する109名を, 負荷タリウム心筋シンチ所見から定性的に次の4群に分類し, 運動負荷時の各因子を比較検討した.0群: タリウム欠損像を認めない.1群: 完全再分布するタリウム欠損像を認める.2群: 不完全再分布するタリウム欠損像を認める.3群: 完全再分布するタリウム欠損像と不完全再分布するタリウム欠損像を認める.4群間には, 年齢, 狭心症・糖尿病の既往, 負荷時の胸部症状の出現率および最大ST低下度に差を認めなかった.他群に比し, 3群で負荷時の最大心拍数は小で, 肺野タリウム集積は大であった.ST回復過程はすべての群で虚血型を示す例が多く認められたが, 1群に比し3群でHR-STループが時計回転を示す例がより多く認められた.以上より, 運動耐容能の低下と虚血からの回復遅延が他群に比し3群でより強く負荷心電図に反映されたが, 他群間における差は明らかでなかった.負荷心電図ST回復過程の検討と負荷タリウム心筋シンチ所見とはお互いに相補的な診断法であると考えられた.