心電図
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心房細動の成立機序: 単一リエントリー説
池田 隆徳杉 薫山口 徹Hrayr S. KaragueuzianPeng-Sheng Chen
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1998 年 18 巻 2 号 p. 179-189

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抄録

心房細動が単一リエントリー (spiral wave) のmeandering (さまよい) 現象によって引き起こされるという仮説を, 高解像度マッピングシステムを用いて検証した.イヌ (n=13) あるいはヒト (n=5) の孤立心房筋を509対の双極電極板 (電極間隔0.5mm, 解析能1.6mm) を底に備えた組織浴槽に固定し, aoetyloholineを加えたTyrode液で灌流した.心筋縁からの基本刺激後, 心筋中央から高電流の早期刺激を与えることにより心房細動を誘発した.イヌ心房筋では直径2~10mmの円形の解剖学的構造物を作成し, 細動波の変化を観察した.細動中の双極電位波形をdV/dt法により処理し, 興奮伝播をディスプレイ上にダイナミックに描写した.ヒト, イヌ心房筋ともに, 迅速な細動波が509点の双極電極で記録された.マッピング上, 渦巻き様に旋回する単一リエントリー (spiral wave) が, 心房内を無秩序に移動 (meandering) する現象が認められ, 時折, breakupやnew wave front発生を来したが, 直ちに単一spiral waveへと再生され, その興奮波が再びmeandering現象を起こすことにより, 細動興奮は維持された.比較的大きな円形構造物が作成されると, リエントリーはその周囲を常に接しながら旋回し, meandering現象は消失し, 電位波形は細動から粗動へと変化した.新しい概念である単一spiral waveのmeandering現象は, 心房細動の機序として矛盾せず, 細動の興奮伝播を解釈する上で興味ある知見と考えられた.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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