心電図
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心室再分極過程に対する抗不整脈薬の影響―体表面QRST等積分値図を用いた検討―
仁禮 隆笠貫 宏
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2000 年 20 巻 6 号 p. 599-606

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抄録

体表面QRST等積分値図を用いて再分極過程に対する抗不整脈薬の影響について検討した.対象は, 頻脈性不整脈145例であり, うち84例は持続性心室頻拍であった.対象に対してのべ153剤の抗不整脈薬が投与された.器質的心疾患を伴うものは110例 (のべ117剤) , 器質的心疾患を伴わないものは35例 (のべ36剤) であった.投与された抗不整脈薬により, 1) 1群=58剤, 2) カルベジロール群: 20剤, 3) カルベジロール以外のβ遮断薬群 (以下β遮断薬群) : 23剤, 4) アミオダロン群: 52剤の4群に分けた.抗不整脈薬投与前後に体表面電位図を記録し, QRST等積分値図を作成した.投与前後の等積分値図の相似性についてLuxらの方法により相関係数を算出し, +0.9未満を`変化あり'とした, 器質的心疾患を伴わない場合は, 全ての例で投与前の分布は正常であり, かつ投与後に変化は認められなかった.器質的心疾患を伴う場合には, 分布が変化したものはI群16%, β遮断薬群14%, カルベジロール群43%, アミオダロン群53%であった.カルベジロール群は1群と比して高率に変化し (p<0.05) , アミオダロン群は1群およびβ遮断薬群と比べて高率に変化した (p<0.01) , 投与前に多双極子性分布を示した42例のうち投与後に単一双極子性分布へと変化し再分極過程不均一性が減少したものは, 1群38%, β遮断薬群0%, カルベジロール群50%, アミオダロン群59%であった.以上, QRST等積分値図は抗不整脈薬の再分極過程に対する影響を検討するのに有用であった, カルベジロールは, 他のβ遮断薬および1群抗不整脈薬と同等以上に再分極過程に影響し, 再分極過程不均一性減少はアミオダロンに匹敵した.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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