抄録
運動負荷心電図による狭心症の判定は通常ST低下からなされる.診断精度は対象によって変わるためさまざまな報告があるが, 58試験11, 691例を集計した成績によると, 運動負荷心電図ST低下が虚血性心疾患を診断する感度は67%, 特異度は72%とされている.一方, 心拍数130/分以上の運動負荷時のR波増高は心筋虚血の反映と考えられている, その診断精度は感度67%, 特異度79%と報告されていて, ST低下による診断を補強できる.しかしこの所見は心拍数130/分以下では診断価値はない.運動負荷によって出現する陰性U波は冠動脈疾患診断において特異度が高く, かつ高度の冠狭窄を反映するので重要な心電図所見である.自験例ではこの所見が冠動脈疾患を診断する感度は37%にとどまるが, 特異度は100%であり陰性U波の出現は冠動脈疾患の存在を強く示唆するものである, 以上からST低下所見にR波増高や陰性U波の出現などを加えることで冠動脈疾患の診断精度は向上できる.