心電図
Online ISSN : 1884-2437
Print ISSN : 0285-1660
ISSN-L : 0285-1660
4.健常人における心室再分極過程の性差と加齢の影響
中川 幹子
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 28 巻 2 号 p. 140-146

詳細
抄録
不整脈には明らかな性差が存在する.例えば, Brugada症候群は男性優位, QT延長症候群によるtorsades de pointesは女性優位の不整脈であるが, それぞれ好発年齢が存在する.男性は思春期以降にQT時間は短くなるが, この現象はテストステロンのQT短縮作用に寄るところが大きいと考えられる.また, QT時間のダイナミックな変化にも明らかな性差が存在する.女性は徐脈になるほどQT時間が延長し, 急激な交感神経興奮時に再分極異常を呈しやすい性質を有する.女性においては, 性周期や妊娠・出産, 更年期などライフサイクルにより性ホルモン環境や自律神経機能が大きく変化し, これらが不整脈の発生に重要な役割を果たしていると考えられる.さらに, 健常人におけるV5誘導のJ波高にも性差が存在し男性が女性に比し有意に高く, 加齢とともに低下する.早期再分極症候群の男性優位性とテストステロンとの関連が示唆される.このように健常成人における心室再分極過程の性差と加齢の影響を明らかにすることは, 不整脈の発生機序の解明や予防・治療法の開発に寄与するものと思われる.
著者関連情報
© 一般社団法人日本不整脈心電学会
前の記事 次の記事
feedback
Top