抄録
極めて稀な疾患である先天性右肺欠損症の1例について, 標準12誘導心電図, Frankベクトル心電図, 体表面心臓電位図および胸部心臓CT所見を比較した。CT像では右肺欠損および左肺の拡大に加え, 心臓の右上方偏位と著明な反時計回転を認めた。標準12誘導心電図では主として著明な反時計回転を認め, ベクトル心電図ではQRS環の著しい前方偏位が存在した。これらの心電図, ベクトル心電図所見はCTで認めた心臓の反時計回転の程度と概略一致するものと考えられた。体表面心臓電位図では極大と右室breakthroughの位置は正常に比し右上方に著明に偏位した。また最大極大の出現時間 (32msec) の短縮および最大極大値 (2.35mV) の増大もみられ, これらは心臓の右前胸壁への接近によるものと考えられた。心臓の反時計回転以外の右上方偏位および右前胸部への接近等の心臓の位置異常は, 標準12誘導心電図, ベクトル心電図よりも体表面心臓電位図により鋭敏に反映された。