抄録
生前の心電図にて平均QRS軸―45度以上の左軸偏位を示した12例の房室伝導系を連続切片法を用いて, 組織学的に検討した。
左脚は左室中隔面に扇状に広がり, 形態的に単純に2枝あるいは3枝系とはみなせなかった。左脚における組織学的病変は主としてその前部から中部領域に認められ, 前部に限局して認められた例は稀であった。このことから左軸偏位の成因には左脚前部から中部領域にかけての広汎な伝導障害が関与することが示唆された。
以上より, Rosenbaumらの提唱したヘミブロック説は心室内伝導障害を理解する上で便利な概念であるが, ヘミブロックという表現は不適当であり, 左脚分枝ブロックに関して左脚の形態に基づいて再検討する必要があると考えられた。