1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 30-36
再灌流不整脈の発現機序を明らかにするため, 摘出心筋において過酸化脂質を産生させた際の電気生理学的変化を検討し, 虚血時不整脈発現因子とされるlysophosphatidylcholine (LPC) および長鎖acyl camitine (AC) 等の両親媒性脂質による電気生理学的異常と比較した.摘出イヌPurkinje線維およびモルモット乳頭筋においてhydroperoxidesにより過酸化脂質を産生させると, LPCやACを灌流した際と同様に, 静止膜電位が減少し, 活動電位高, 最大立上り速度が減少した.乳頭筋においては静止張力, 発生張力の増加と共に遅延後脱分極, triggered activityの発現が認められた.この様に, 心筋細胞膜脂質の過酸化は, 両親媒性脂質増加時と非常に類似した電気生理学的異常および収縮異常を惹起し, 再灌流不整脈および再灌流時心機能障害の一要因になり得る可能性が示唆された.