心電図
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発作性心房細動および上室頻拍の日内出現様式に関する検討
―器質的心疾患の有無ならびに加齢の影響を含めて―
佐藤 美智子田辺 晃久
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1989 年 9 巻 2 号 p. 243-252

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抄録

発作性心房細動 (Paf) と上室頻拍 (SVT) の日内発生様式ならびに日内発生様式に対する加齢の影響, 器質的心疾患の有無による差を検討した.対象はPaf37例, SVT67例で, Paf, SVTの発生時間帯をホルター心電図法によりもとめた.発生時間帯は自律神経緊張の日内リズムに関する文献を参考に, 早朝, 日中, 夕夜, 深夜の4時間帯に分けた.65歳以上を老年群, 未満を非老年群とした.Paf例数は非器質的心疾患 (NHD) では夕夜が他の各時間帯に比べ有意に多かった (p<0.05~p<0.01) が器質的心疾患 (OHD) では各時間帯に有意差はなかった.SVT例数はOHD, NHDとも各時間帯間に有意差はなかった.Paf例数は老年群に比べ非老年群が多く (OHD: p<0.05, NHD: p<0.01) , NHD非老年群では夕夜Pafが日中, 深夜Pafに比べ有意に多かった (各p<0.05) .一方, SVT例数は非老年群に比べ老年群が多かった (OHD: p<0.05, NHD: p<0.1) .
以上よりPafとSVTの日内発生様式は異なるという成績が得られた.また (1) NHD非老年群に夕夜Pafが多かったこと, (2) 夕夜は自律神経緊張の日内リズムで交感神経緊張優位から迷走神経緊張優位への移行期と考えられること, (3) 夕夜Paf例の中に交感神経緊張の生じるトレッドミル運動負荷直後に発作性上室頻拍を生じ迷走神経緊張の生じるバルサルバ手技にてPafへの移行例があったこと, などから本研究はPaf発生に関する動物実験成績の交感神経-迷走神経相互干渉説を支持する一つの臨床データと考えられた.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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