1989 年 9 巻 2 号 p. 253-263
虚血心筋の電気生理学的特性に対するbretylium (以下B) 静注 (15mg/kg) およびsotalol (以下S) 静注 (0.5mg/kg) の作用を検討した.犬20頭を用いBあるいはS投与前後でLADを10分間結紮して急性心筋虚血を作成し電気生理学的計測を行なった. (1) 結紮前の左室心筋の伝導時間および虚血心筋内伝導遅延に対しBおよびSは影響を与えなかった. (2) 結紮前の左室心筋の不応期をBおよびSは有意に延長させた. (3) 10分間の冠動脈閉塞により虚血心筋の不応期は有意に短縮したが, BおよびS投与後は虚血心筋の不応期は結紮前に比し, 有意な変化が見られなかった. (4) 虚血部心筋間質K+の上昇の速度は薬剤投与後やや緩徐になったが, 統計学的に有意ではなかった. (5) 房室伝導に対してはB, SともにAH間隔の延長傾向を認めたが有意ではなく, HV間隔は不変であった.以上より心筋梗塞急性期においてBおよびS静注は虚血心筋の不応期を延長させ, 抗不整脈作用を示すことが示唆された.