抄録
2誘導Holter心電図で虚血性ST偏位を診断する際, 誘導数不足が懸念される.著者は, この対策として, 二つの誘導情報から第3の情報を合成により求める方法を考案した.方法: 1) ベクトル減算からV5-V1, V6-V1, V5-V2, V6-V2の誘導ベクトルを作図し, Frankの写像面との交点を求め, 各点に対応する体表面上の点の単極誘導心電図と, V1, V2, V5, V6の出力を差動増幅器で合成した上記各合成誘導心電図とを比較した.2) 各種右冠状動脈疾患例におけるV5-V2誘導の有用性を検討した.結果: 1) V5-V1とV6, V6-V1とV7, V5-V2とV8, (V8の一肋間下) , V6-V2とV9, (V9の一肋間下) の心電図波形は80%以上の例で一致した.2) 右冠状動脈疾患でのV5-V2とV8, のST, T変化は85%以上の例で一致した.結論: 本法は, 二つの誘導情報から第3の誘導の情報が連続的に得られ, Holter心電図の誘導数制約の解決に有用と考えられた.