抄録
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)準稀薄溶液中で無水マレイン酸のグラフト重合を行ったのち,この溶液を急冷することでゲルキャストフィルムを作製した。得られたフィルムに超延伸を施した際,導入された極性官能基が試料の力学物性並びに表面性質に与える影響について赤外線分光分析,引張り試験,動的接触角測定,および90°剥離試験により検討を行った。その結果,後処理としての表面改質ではなく,予め溶液中でグラフト重合を行い,次いでゲルキャストフィルムを沸騰水中で超延伸することにより,最終的な超延伸フィルム表面の水との接触角を低減させることが可能となった。この表面にエポキシ樹脂を塗布したところ,未処理試料に比較して約6倍の90°剥離強度を得ることができた。また,グラフトにより最高到達延伸倍率,力学物性の低下が観察されたが,極性官能基の導入量を制御することにより,高強度・高弾性率の力学性能と高接着性を併せ持つPEを作製できることが明らかとなった。