教育医学
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日本式座位(正座)が歩行特性に及ぼす影響
内山 応信出村 慎一青木 宏樹纐纈 龍
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2008 年 53 巻 4 号 p. 357-366

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抄録
 正座は,日本の様々な稽古事において頻繁に行われる座位姿勢であるが,下腿への血行を妨げ足の感覚麻痺を引き起こすことから,正座後の歩行のふらつきや転倒につながる可能性が高い.本研究の目的は,若年成人20名を対象に,正座が下腿の組織酸素動態と足底の感覚(深部体性感覚閾値),および歩容に及ぼす影響を検討することであった.  10名の成人男性および女性が,正座姿勢の前後に歩行する実験に参加した.被験者は,正座の前の安静時(Pre-test),正座を維持し,足底筋の固有受容感覚閾値が上昇した直後(post-test 1),5分後(post-test 2)および10分後(post-test 3)に水平の直線路面上(10m)を歩行した.正座中には,ヒラメ筋酸素動態と電気刺激による足低筋収縮に対する固有受容感覚閾値が測定された.  正座開始直後に酸素化Hb/Mb量は減少し,脱酸素化Hb/Mb量は上昇し,約3〜5分後にはプラトーに達した.この下腿筋の鬱血状態はおよそ18分維持され,その後,足底筋の固有受容感覚閾値が上昇した.ストライドおよび歩行速度は,正座前に比べ,体性固有受容感覚閾値の上昇直後から5分後まで低値を示した.  要約すると,正座による足底の感覚麻痺に起因する歩行異常,それに伴う転倒の危険性を低減するためには,正座を止めてから10分程度の休憩が必要とされる.
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2008 日本教育医学会
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