日本環境感染学会誌
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原著論文
水廻り環境より分離されるPseudomonas aeruginosaの熱水による除菌効果
鈴木 由希藤村 茂目黒 美保渡辺 彰
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キーワード: Pseudomonas aeruginosa, 除菌, 熱水
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2008 年 23 巻 5 号 p. 332-337

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抄録

  Pseudomonas aeruginosaは,病院環境において浴室や蛇口の取っ手,シンクなどから検出されやすく,医療者の手を介した伝播が問題である.我々は,環境汚染や人体毒性および経済性を考え消毒剤を用いず水廻り環境中のP. aeruginosaに対し熱水を用いた除菌効果を検討した.臨床分離P. aeruginosa株(S-1),多剤耐性株(R-1)およびbiofilmを形成させた株(B-1)は60℃,5秒および15秒の熱水処理で菌の生残が認められたが,60℃,30秒以上及び70℃,5秒以上の条件で完全に死滅した.また,一般入浴施設4施設より洗面台,蛇口の取っ手など168検体を採取し,P. aeruginosaの汚染状況を調査し,菌が検出された一般入浴施設の4箇所と比較対照として病院および老人保健施設のそれぞれ1箇所に対して,今回の検討で得られた死滅条件による熱水処理にて除菌効果を検討した.S-1, R-1, B-1株の全てにおいて,熱水処理を実施した6箇所のうち一般入浴施設の蛇口,取っ手2箇所が除菌されなかったが,洗面台2箇所および病院と老人保健施設の蛇口の取っ手は完全に除菌された.一般入浴施設で使用されている蛇口の取っ手は,温度調節機能やシャワーと蛇口の一体化など複雑な形状をしていることから熱水が隅々まで到達しにくいと推察されるが,一般的に病院で使用される蛇口は取っ手のみの簡素な形状が多いことから今回の熱水を用いた除菌法は,医療機関や老人保健施設などさまざまな施設に応用できると考えられた.

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© 2008 一般社団法人 日本環境感染学会
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