日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
原著論文
安全装置付き鋭利器材の針刺し発生率への影響
坂本 史衣
著者情報
キーワード: 針刺し, 中空針, 安全器材
ジャーナル フリー

2009 年 24 巻 2 号 p. 100-105

詳細
抄録

  稼動病床数520床の臨床研修指定病院において2002~2007年に採用された安全装置付き翼状針,静脈留置針,ランセット,埋込みポート穿刺針が,針刺し発生率に与える影響について検討した.471件の針刺しが報告され,中空針によるものが60%以上を占めた.安全装置のある器材(安全器材)と無い器材(従来品)による針刺し発生率を比較すると,翼状針(11.0対25.1/10万本,p<0.01)と静脈留置針(1.0対6.6/10万本,p<0.01)で安全器材の発生率が有意に低く,安全器材は,翼状針(RR=0.44, 95%CI=0.31~0.61)と静脈留置針(RR=0.16, 95%CI=0.05~0.50)の針刺しリスクを低減することがわかった.各年の全器材本数に占める安全器材の割合と針刺し発生率の相関をみると,翼状針では強い負の相関を(r=−0.94, p<0.01),静脈留置針では中等度の負の相関(r=−0.53, p=0.15)を認めた.安全器材の使用期間が1年以下のランセット(0.0対0.8/10万本,p=0.42)と埋込みポート穿刺針(0.0対41.2/10万本,p=0.19)は,安全器材による針刺し発生率が従来品より低かったが,有意差はなかった.安全器材は針刺し予防に有効だが,採用後は従来品に代わり,安全器材の使用を推進することが予防効果を高めることが示された.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top