日本環境感染学会誌
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症例報告
クロイツフェルト・ヤコブ病が疑われた患者の手術対応と整形外科手術器械の扱い
押川 志津子境 美代子
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2009 年 24 巻 2 号 p. 129-133

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抄録

  クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が疑われる患者が大腿骨頸部骨折の手術目的で入院となり,初めてCJD患者を想定した人工骨頭置換手術を経験し,感染予防対策上重要と思われる幾かの具体的な問題点に遭遇した.今回の手術を前提にした入院受け入れの決断には,メーカーからの借用手術器具の汚染処理などに関する約束書が取り交わせたことが大きな要素であった.以後手術まで2日間に最低限使用する鋼製器械の選択と使用後の処理方法及び手術室環境面に関し,CJD手術対応における消毒滅菌方法を含めたマニュアルを急遽作成した.2002年の厚生労働省マニュアルではCJD患者に使用の器械処理にはドデシル硫酸ナトリウムや蟻酸の薬液処理が完全であるとしているが,小規模病院ではこれら特殊薬品で処理を行う設備が無く,また金属の腐食性を考え,当院購入器具は余儀なく焼却廃棄を選択した.一方借用器械は,次亜塩素酸ナトリウム液120分浸漬後,さらに高圧蒸気滅菌(132℃,1時間)で処理を行い返却した.経済面では器械処理作業に通常の5倍の時間を要し,消毒薬の大量使用や器械の廃棄などを考えると病院の負担は大きいといえる.2008年「プリオン病感染予防ガイドライン」では,CJD二次感染リスクの低減のため,CJDの感染性が高いハイリスク手技に用いられた手術器械の処理方法が提示された.整形外科領域では脊椎手術についてハイリスク手技対応で実施すると提示されていることについては,病院としての対応について今後さらに検討することになる.

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© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
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