日本環境感染学会誌
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カルバペネム系抗菌薬の使用と緑膿菌の薬剤耐性
栃倉 尚広鏑木 盛雄山舘 周恒本石 寛行林 国樹
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2009 年 24 巻 3 号 p. 195-201

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抄録
  2005年1月~2008年6月における6ヶ月ごとのカルバペネム使用量,および調査期間中に入院患者から分離された緑膿菌813株について,6ヶ月ごとの感受性動向と交差耐性について検討した.さらに,2007年11月から3ヶ月間に入院患者から分離された緑膿菌38株について,カルバペネム5抗菌薬のMICを測定した.①カルバペネム使用量は2007年7~12月以降,著明な増加がみられた.②2007年1~6月以前では,感性率の経時変化は乏しくAMK, GM, CPFX, LVFX, PIPC, CFPMでは90%以上が感性であり,IPM, MEPMにおいても感性率80%以上を維持していた.これに対し2008年では90%以上の感性率を示した抗菌薬はAMK, GM, PIPCの3抗菌薬に減少し,使用量増加と感性菌減少との関連が示唆された.③2007年7月から1年間に分離されたIPM耐性35株とMEPM耐性27株の比較では,MEPM耐性株の方が,各種抗菌薬の感性率が低かった.④全国サーベイランスと比べ,当院ではMEPM耐性率が23.7%と高かった.カルバペネム5抗菌薬の比較では,DRPMに対する耐性率が22~33%と最も低かった.また,メタロ-β-ラクタマーゼ産生株,多剤耐性緑膿菌は検出されなかった.
  今回の検討では,カルバペネム使用量の増加に伴う感性率の低下が示唆され,特にMEPM耐性株ではセフェム系をはじめとする各種抗菌薬の感性率の低下が認められた.今後も引き続き使用動向調査,サーベイランスを行うとともに,カルバペネムの適正使用に向けた取り組みを行っていく必要があると考えられた.
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© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
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