日本環境感染学会誌
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原著論文
当院のノロウイルス胃腸炎集団発生事例における実地疫学調査
上野 正浩清水 雄大板子 和恵清水 紀臣合田 史内山 俊正
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2010 年 25 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

  2009年2月1日より始まった当院の入院患者及び病院職員におけるノロウイルスに起因する感染性胃腸炎の集団発生に対して,病院感染制御チームは事態収拾のための対応及び実地疫学調査を開始した.集団発生探知前では病棟職員に感染防御策(標準予防策及び接触感染予防策)が一部充分ではなくまたノロウイルスに有効な次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が施行されていなかった.症例対照研究からは,単変量解析及び多重ロジスティック回帰分析のいずれも「車椅子専用トイレ使用の有無」のみが統計学的有意を示した(多重ロジスティック回帰分析:オッズ比5.302,95%信頼区間1.376-20.433, p=0.015).院内での入院患者の急激な下痢や嘔吐等,急性胃腸炎症状を呈する患者発生を探知した際には,まず季節性や地域流行情報等からのノロウイルス等の感染性胃腸炎の可能性の考慮,そして患者や汚物に対しての感染源及び感染経路対策の実施,感染性胃腸炎の発症者と非発症者の早期選別と利用するトイレ及び使用する車椅子等の物品の早期の厳格な区別,発症者用のトイレや車椅子,患者と接触した物品等の頻回な病院職員や清掃業者による消毒,等がノロウイルスの集団発生予防対策に有効であると考えられた.

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© 2010 一般社団法人 日本環境感染学会
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