抄録
当院では2008年6月から循環器・腎臓・脳卒中内科および心臓血管外科等の所属するA病棟において,MRSAの入院時積極的監視培養を実施している.今回,積極的監視培養導入前後のそれぞれ1年間のMRSA検出状況等を調査し,積極的監視培養導入の効果について検討した.
A病棟の入院時MRSA持込率は10.2%と高率であった.積極的監視培養導入前の新規MRSA検出患者数は34例(持込:11例,病院感染:15例,不明:8例)で,MRSA感染症発症者数は9例(持込:2例,病院感染:5例,不明:2例)であった.積極的監視培養導入後の新規MRSA検出患者数は66例(持込:58例,病院感染:8例)で,MRSA感染症発症者数は4例(持込:3例,病院感染:1例)であった.積極的監視培養によって潜在的なMRSA保菌者が明確にされたことで,接触予防策が徹底され,病院感染発症者数は減少する可能性が示唆された.MRSA保菌リスクの高い患者を対象とした入院時積極的監視培養の実施は,病院感染およびMRSA感染症の発症の防止に有効な方法であると考えられる.