日本環境感染学会誌
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報告
感染対策地域ネットワークに求められる支援内容
—2012年4月からの感染防止対策加算導入前におけるX県の実態調査より—
山﨑 史福井 康雄有瀬 和美原 昭恵武内 世生
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2012 年 27 巻 6 号 p. 397-404

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抄録

  2011年6月の厚生労働省医政局指導課長通知には,「医療機関相互のネットワークを構築し,日常的な相互の協力関係を築くこと」とある.X県における感染対策上の課題を明らかにし,今後どのような協力関係が必要かを明らかにするため,2012年2月に県内の577医療機関に対してアンケート用紙を送付し,288施設から回答を得た.医療機関の規模を問わず平時の対策として,「人材不足」,「職員の教育」,「感染症外来の専用診察室」について不十分である事が分かった.また,アウトブレイク時には,規模を問わず保健所に報告・相談する医療機関が非常に多い事が判明した.一方,規模が小さい医療機関ほど,アウトブレイク時に他施設からの支援が必要な事,また,2012年4月に新設された感染対策に関わる加算は,診療所の86%(167医療機関)が算定を予定しておらず,規模が小さくなるほど算定しにくいことが判明した.逆に,「職員への感染対策の徹底」や「転院時の情報共有」に関しては,規模が大きい医療機関にとって重要な課題であることが判明した.以上より,アウトブレイク時に保健所が相談窓口となり,大病院と連携して中小病院を支援する体制を構築する予定である.また,病院規模の違いによって抱えている課題も異なることから,同じ規模の病院同士の連携も強めたい.最後に,今後は診療所でも算定可能な,新たな加算の設定が望まれる.

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© 2012 一般社団法人 日本環境感染学会
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