日本環境感染学会誌
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27 巻 , 6 号
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原著論文
  • 熊谷 あゆ美, 平内 美雪, 和田 祐爾, 馬場 尚志, 飯沼 由嗣
    2012 年 27 巻 6 号 p. 375-379
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      手術時手指消毒として,ブラシを用いない1.0 w/v%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)含有エタノール擦式製剤による手指消毒(ウォーターレス法,WL法)の効果を,4 w/v%CHGスクラブ製剤および0.2 w/v%ベンザルコニウム塩化物(BAC)含有エタノール製剤を使用したツーステージ法(TS法)との比較により評価した.被験者は手術室勤務の看護師10名とし,同一被験者がTS法とWL法を行い比較した.手指菌数は,手指消毒直後と消毒3時間後にグローブジュース法(GJ法)を用いて測定した.ベースラインの菌数と比較して,消毒直後と消毒3時間後の菌数は,TS法とWL法ともに有意に減少した.特にWL法では,3時間後においても持続的な殺菌効果が示された.また,消毒効果を菌数の指数減少値(平均±SD)で比較したところ,消毒直後では差が見られなかったが,消毒3時間後では,TS法の指数減少値は2.01±0.70であったのに対して,WL法では2.99±0.49と有意に優れた結果となった.1%CHG製剤を用いたWL法は,0.2%BAC製剤によるTS法と比較して,より優れた持続殺菌効果が期待できる手術用手指消毒製剤であると考えられた.
  • 渋谷 智恵
    2012 年 27 巻 6 号 p. 380-388
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      HBV, HCV, HIVは,体液に曝露することで感染する可能性のある主な感染性の病原体である.本研究は,訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師の血液・体液曝露発生の実態とその感染対策の実施状況を全国規模で明らかにすることを目的とした.
      全国の訪問看護師319名から自記式質問紙調査に協力が得られた(回収率31.9%).訪問看護師になってから針刺しを少なくとも1回は経験した看護師の割合は35.7%,粘膜曝露は36.4%だった.また直近1年間に針刺しを経験した訪問看護師は5.0%,粘膜曝露は27.3%だった.直近1年間では,粘膜曝露は針刺しの約5.5倍発生していた.血液・体液曝露の発生を職場に報告していない看護師の割合は,針刺し23.0%,粘膜曝露75.7%だった.粘膜曝露は針刺しの約3.3倍報告されていなかった.本調査により初めて,全国訪問看護師の血液・体液曝露の発生や報告状況が明らかになった.また今後取り組むべき課題として,訪問看護師への教育,針刺し危険行為の禁止,個人防護具の活用,B型肝炎予防接種の指導とマニュアル整備の必要性が考えられた.
  • 福田 治久
    2012 年 27 巻 6 号 p. 389-396
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      医療政策に費用対効果の視点を導入する議論は,感染制御領域においても例外ではない.しかしながら,費用対効果の検証に不可欠な,我が国における疾病費用に関する検証は十分に実施されていない.本研究の目的は胃手術の実施症例に対する手術部位感染(SSI)発生による追加的医療資源を推定することである.
      2007年7月から2010年12月の間に6病院において胃手術を実施した症例を解析対象に定めた.使用データは,JANISデータとDPCデータを突合して構築したJANIS/DPC統合データベースである.推定には,従属変数を術後在院日数および術後医療費(出来高換算)に定め,曝露変数をSSIの有無および深さに定めた一般化線形モデルを用いた.
      解析対象症例数は857症例であり,感染者数は42症例であった.SSI発生による術後在院日数の延長および術後医療費の増加は,表層切開創SSIでは6.6日および206千円,深部切開創SSIでは12.8日および398千円,臓器/体腔SSIでは18.3日および1,021千円と推定された.
      本研究は,JANISデータとDPCデータという既存データを突合するJANIS/DPC統合データベースを構築するとともに,6施設を対象に胃手術症例におけるSSI発生による追加的医療資源を推定した.本推定値は,感染制御方策の費用対効果の検証に活用可能である.
報告
  • 山﨑 史, 福井 康雄, 有瀬 和美, 原 昭恵, 武内 世生
    2012 年 27 巻 6 号 p. 397-404
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      2011年6月の厚生労働省医政局指導課長通知には,「医療機関相互のネットワークを構築し,日常的な相互の協力関係を築くこと」とある.X県における感染対策上の課題を明らかにし,今後どのような協力関係が必要かを明らかにするため,2012年2月に県内の577医療機関に対してアンケート用紙を送付し,288施設から回答を得た.医療機関の規模を問わず平時の対策として,「人材不足」,「職員の教育」,「感染症外来の専用診察室」について不十分である事が分かった.また,アウトブレイク時には,規模を問わず保健所に報告・相談する医療機関が非常に多い事が判明した.一方,規模が小さい医療機関ほど,アウトブレイク時に他施設からの支援が必要な事,また,2012年4月に新設された感染対策に関わる加算は,診療所の86%(167医療機関)が算定を予定しておらず,規模が小さくなるほど算定しにくいことが判明した.逆に,「職員への感染対策の徹底」や「転院時の情報共有」に関しては,規模が大きい医療機関にとって重要な課題であることが判明した.以上より,アウトブレイク時に保健所が相談窓口となり,大病院と連携して中小病院を支援する体制を構築する予定である.また,病院規模の違いによって抱えている課題も異なることから,同じ規模の病院同士の連携も強めたい.最後に,今後は診療所でも算定可能な,新たな加算の設定が望まれる.
  • 萩谷 英大, 國米 由美
    2012 年 27 巻 6 号 p. 405-411
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      院内感染対策活動において職業感染防止策の徹底は,医療従事者を感染症から守るという意味において非常に重要である.医療従事者は日常的に感染症に曝露する可能性が高く,ワクチン予防可能疾患に対しては積極的にワクチン接種を行い,予防することが推奨されている.
      集中治療室における汎発性帯状疱疹患者の発生,手術室における流行性耳下腺炎患者の緊急手術事例をきっかけに,当院関連施設の全職員を対象としたワクチン接種活動を行うこととなった.対象疾患は麻疹,風疹,流行性耳下腺炎,水痘帯状疱疹の4疾患,対象人数は984人であった.発案・計画から抗体価測定,抗体陰性者に対する2回のワクチン接種の完了まで約7ヶ月という短期間で終了し,抗体価低値者全体におけるワクチン接種率は麻疹81.9%,風疹76.9%,流行性耳下腺炎76.2%,水痘帯状疱疹60%であった.
      院内でワクチン予防可能疾患の発症事例が続いたこと,Infection Control Teamだけでなく業務改善など他の事業と関連付けて他部署と協力して活動したこと,抗体価検査の全額とワクチン接種費用の半額を病院負担としたこと,ワクチンの同時接種を院内コンセンサスとして認めたこと,などが短期間で多数の職員に対して高い接種率でワクチン接種を完遂できた要因と考えられた.
  • 古林 千恵, 矢野 久子, 尾上 恵子, 脇本 寛子, 脇山 直樹, 畑 七奈子, 山本 洋行, 脇本 幸夫
    2012 年 27 巻 6 号 p. 412-418
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      高齢社会の到来と医療費の削減を背景に,入院期間の短縮,在宅医療の普及が推進されている.退院後,引き続き自宅での医療が必要な場合には,短い入院期間中にこれらの医療に関する新たな技術を習得することが求められている.今回,清潔間欠自己導尿(CIC)の継続指導チェックリスト作成のために患者10名を対象に,導入時および継続指導の実態を調査した.CIC導入時の問題点として,口頭指導のみでCICを開始させた場合があった.また,手順指導を行なった場合であっても患者の個別性や身体的機能,異常時の対応,自宅の状況などを考慮した指導にいたっていないことや膀胱過拡張予防の理解,排尿記録の目的を理解した記載が行われていないことが明らかになった.外来では,残尿が無いように排尿をさせる体位や手順確認を含めた継続指導を行っていなかった.これらのことから,膀胱過拡張予防の理解,上部尿路保護を意識した排尿量の保持と排尿間隔でCICを実施する排尿記録の記載を中心とした継続指導が重要であることが明らかになった.以上を踏まえ,問題点の抽出を行い継続指導チェックリストを作成した.
  • 小笠原 康雄, 長崎 信浩, 大野 公一, 播野 俊江, 吉田 知子, 丸子 恵
    2012 年 27 巻 6 号 p. 419-424
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      当院において,2007年1月から2012年1月の間に緑膿菌が検出され,MEPMの投与を受けた患者33例について,MEPMの投与前に比べてMICが不変あるいは緑膿菌が消失した群を非耐性化群,MICが上昇した群を耐性化群として2群に分け,「非耐性化」と「耐性化」の2変数を目的変数とし,患者の「年齢」,「CCr」,「入院期間」,「MEPMの1日投与量」,「MEPMの24時間%Time above MIC(%T>MIC)」,「MEPMの投与期間」,「MEPM投与前の緑膿菌のMIC」,「ICU入室の有無」の8項目を緑膿菌耐性化危険因子の変数として,単変量解析と多変量解析を行った.単変量解析の結果,「%T>MIC」と「MEPM投与前の緑膿菌のMIC」の2変数に有意差が認められた.しかし,「CCr」,「MEPMの1日投与量」,「%T>MIC」,「MEPM投与前の緑膿菌のMIC」の4変数には多重線形性が認められた.このことより,「%T>MIC」と「MEPM投与前の緑膿菌のMIC」が,交絡関係を有した緑膿菌の耐性化危険因子と考えられ,MEPMを投与時には,緑膿菌のMICを確認し,%T>MICが延長する投与設計が必要であると考えられた.多変量解析の結果は,有意差を生じる項目は無かったが,「ICU入室の有無」については,p値が小さく,注意が必要であると考えられた.
  • 副島 之彦, 小笠原 正
    2012 年 27 巻 6 号 p. 425-430
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      重症心身障害児者や要介護高齢者では,介助歯磨きが不可欠であるが,介助歯磨きの際の血液汚染のリスクは明らかになっていない.血液汚染のリスクが明確になれば,介助歯磨き時の手袋着用の根拠となる.そこで本研究は,介助歯磨きによる介助者の手への血液汚染状況を調べるとともに,適切な歯磨き法により介助者の手への血液汚染を防止できるか否かを検討した.調査対象者は51組の被介助者と介助者を調査対象とした.比較対照は1名の歯科衛生士であった.歯科治療前に保護者にグローブを装着させたうえで,1分間の介助歯磨きを実施させた.介助歯磨き終了後にグローブを回収し,ルミノール発光試験を実施した.また介助歯磨き前と後の唾液を採取し,唾液中のヘモグロビン濃度を測定した(ラテックス凝集法).
      被介助者は臨床的に健康歯肉を有していたが,介助歯磨きにより唾液中のヘモグロビン濃度は,有意に増加した.介助歯磨き後の唾液中ヘモグロビン濃度に影響する要因として歯磨き方法と歯肉炎の状態が挙げられた.介助歯磨きによる手への血液汚染率は,保護者が15.1%で,歯科衛生士が18.9%で,有意差がなかった.手への血液汚染部位は,指先が1.9~11.3%の頻度で認められたが,他は左手掌側の掌部のみに1.9%の頻度で認められた.
      スクラビング法の実施と歯肉の健康の維持は,介助歯磨き時の血液感染疾患の感染リスクを減少させるが,完全な防止策とはならないので,現段階では介助者は歯磨き時にグローブの着用が重要であることがあらためて示唆された.
  • 渡邊 康子, 小林 寬伊, 野﨑 貞彦, 下平 智子
    2012 年 27 巻 6 号 p. 431-435
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/05
    ジャーナル フリー
      1998年に行った針刺し・切創に関する実態調査により,病院における清掃従事者が針等による受傷が発生していることが判明した.この結果を基に,清掃従事者への針刺し等受傷防止のための教育に努めてきたが,現状を把握するため,再度実態調査を行った.
      2009年に医療関連サービスマーク認定事業者全1,368社にアンケート用紙を郵送し,340社より回答を得た(回収率24.9%).アンケートの結果,教育体制については整いつつあるものの,針刺しの発生状況はわずかに増加していた.原因機材としては,注射針についてインスリンの針があげられており,多種多様化した針を清掃従事者が針だと認識できずに受傷していることもわかった.また,清掃従事者の多くはパートタイマーであり,人員の交替が多く,ワクチン接種等があまり実施されていないことは,今後の課題と考える.
      今後は清掃従事者への針刺し防止のための具体的な教育をさらに徹底するとともに,医療機関等とビルメンテナンス事業者との協力体制を整えていくことが不可欠である.
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