日本環境感染学会誌
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原著論文
JANIS/DPC 統合データベース構築による胃手術における手術部位感染発生による追加的医療資源の推定
福田 治久
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2012 年 27 巻 6 号 p. 389-396

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抄録

  医療政策に費用対効果の視点を導入する議論は,感染制御領域においても例外ではない.しかしながら,費用対効果の検証に不可欠な,我が国における疾病費用に関する検証は十分に実施されていない.本研究の目的は胃手術の実施症例に対する手術部位感染(SSI)発生による追加的医療資源を推定することである.
  2007年7月から2010年12月の間に6病院において胃手術を実施した症例を解析対象に定めた.使用データは,JANISデータとDPCデータを突合して構築したJANIS/DPC統合データベースである.推定には,従属変数を術後在院日数および術後医療費(出来高換算)に定め,曝露変数をSSIの有無および深さに定めた一般化線形モデルを用いた.
  解析対象症例数は857症例であり,感染者数は42症例であった.SSI発生による術後在院日数の延長および術後医療費の増加は,表層切開創SSIでは6.6日および206千円,深部切開創SSIでは12.8日および398千円,臓器/体腔SSIでは18.3日および1,021千円と推定された.
  本研究は,JANISデータとDPCデータという既存データを突合するJANIS/DPC統合データベースを構築するとともに,6施設を対象に胃手術症例におけるSSI発生による追加的医療資源を推定した.本推定値は,感染制御方策の費用対効果の検証に活用可能である.

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© 2012 一般社団法人 日本環境感染学会
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