日本環境感染学会誌
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原著論文
重症心身障害児(者)における唾液と喀痰に共通して分離される医療・介護関連肺炎原因菌について
福本 裕望月 規央三山 健司榎園 崇中川 栄二小澤 慎太郎岡田 尚巳
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2015 年 30 巻 4 号 p. 249-256

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抄録

  重症心身障害児(者)(重症児(者))の医療・介護関連肺炎(NHCAP)の発症リスクについて,不顕性誤嚥に着目し,唾液と喀痰に共通するNHCAP原因菌(共通NHCAP原因菌),および日常生活動作の影響を検討した.当院入院の重症児(者)男性5人,女性8人の計13人,中央値で19歳,全例が全介助,栄養は経鼻経管7人,胃瘻6人,また,気管切開は4人,喉頭気管分離は5人に施術していた.唾液と吸引痰を同時に採取し,共通して分離培養された菌種から共通NHCAP原因菌を検討した.唾液から96株,喀痰から82株,共通した菌は49株が分離された.共通NHCAP原因菌は36株で,唾液,喀痰それぞれ全分離菌中38%,44%,また共通した菌中の73%を占めた.共通NHCAP原因菌の菌種は,口腔内レンサ球菌が8人,H. influenzaeが7人,P. aeruginosaが5人から分離された.喉頭気管分離により,共通する菌数は減少し(p<0.01),口腔内レンサ球菌が減少(p<0.05)した.重症児(者)に共通NHCAP原因菌が定着し,誤嚥によるNHCAPのリスクが高いと考えられた.喉頭気管分離は口腔内レンサ球菌によるNHCAPのリスクを軽減した.しかし,共通NHCAP原因菌が口腔から下気道へ感染に影響する要因には,気管孔周囲の汚染や医療スタッフとの接触などが考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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