日本環境感染学会誌
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原著
口腔ケア時の洗浄液の飛散状況および口腔環境調査
梅津 敦士三橋 睦子
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2017 年 32 巻 4 号 p. 186-192

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抄録

口腔ケアは,湿性生体物質に触れる機会が多く,標準予防策の順守が重要である.しかし,標準予防策の根拠に対する検討は少ない.本研究では,口腔ケアと洗浄液飛散状況の調査を行い,個人防護具の必要性について検討した.脳血管障害を有する意識障害患者26名に対して看護師91名が実施した口腔ケア106場面を対象とした.洗浄液の飛散調査は,ATP測定法を用い,口腔ケア前後に看護師の手関節,フェイスシールド,エプロンの表面を拭き取りRLUとして数値化した.患者の平均年齢は76歳であり,口腔内環境は,舌苔が13名,口腔内乾燥が14名,歯肉出血が11名であった.11名に誤嚥性肺炎の既往があった.5名の喀痰よりMRSA,2名の喀痰より緑膿菌が分離された.看護師の経験年数は平均11.9年であり,口腔ケア時間は平均4分5秒であった.手関節の平均RLUは,口腔ケア前が636.2,後が836.2と有意に上昇した(p=0.0003).フェイスシールド,エプロンも同様の傾向であった(p<0.01).口腔ケア方法では,歯ブラシ・スポンジブラシ・吸引の使用,ギャッジアップ,5分以上の口腔ケアを実施した場合にRLUが高かった.また,40回の口腔ケア場面において出血が確認され,血液を含んだ飛沫の発生が考えられた.以上の結果より,口腔ケア時の手袋,フェイスシールド,エプロンを含めた個人防護具の必要性が改めて明らかとなった.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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