日本環境感染学会誌
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原著
医療従事者におけるDTaP接種後の経時的百日咳抗体保有状況の評価と追加接種時期の検討
伏見 華奈池ヶ谷 佳寿子土屋 憲齋藤 敦子更谷 和真徳濱 潤一原田 晴司芦澤 洋喜増田 昌文
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キーワード: 百日咳抗体, DTaP, 追加接種
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2021 年 36 巻 3 号 p. 149-156

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抄録

当院は,乳児への百日咳感染の伝播を防ぐため,2012年から小児科と産婦人科の医療従事者は在籍時にDTaP(Diphtheria Tetanus acellular Pertussis)の接種とその前後で百日咳抗体価測定を行うワクチンプログラムを実施している.今回,在籍時のDTaPの接種から長期間経過した医療従事者の百日咳抗体価測定を行い,後方視的に抗体価の減衰時期を評価し次の追加接種の時期を検討した.

医療従事者のDTaP接種前の百日咳抗体保有率は64.4%(67/104人)であった.DTaP接種から4週間後の抗体価は有意な上昇を示した.DTaP接種から長期間経過した医療従事者の抗体価は,年数の経過に伴い減少しており,経過6年の医療従事者では100%(7/7人)が抗体を保持できていたが,経過7年では68.5%(24/35人)と減少していた.期間中,百日咳患者は散発的に確認されたが院内感染の発生はなかった.想定される追加接種にかかる費用は149,390円であり費用対効果は高いと考えられる.

DTaP接種から経過7年で抗体価のモニタリングと追加接種を行うことが望ましいと示唆された.しかし,国や地域の百日咳の流行状況や医療・経済事情により,抗体の減衰する時期や追加接種の時期は大きく異なることが考えられ,今後も国内外の流行状況をふまえ追加接種のタイミングを検討する必要がある.

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© 2021 一般社団法人 日本環境感染学会
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