日本環境感染学会誌
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Proceedings
我が国におけるダニ媒介感染症の現況
岩﨑 博道
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2023 年 38 巻 3 号 p. 86-89

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抄録

我が国に多発するダニ媒介感染症には,つつが虫病,日本紅斑熱および重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)があり,日本紅斑熱とSFTSは近年増加が著しい.つつが虫病と日本紅斑熱の原因病原体はリケッチアであり,テトラサイクリン系薬が有効である.他方,SFTSの原因病原体はウイルスであるが,有効な抗ウイルス薬は確定していない.つつが虫病と日本紅斑熱の臨床症状は,発熱・皮疹・刺し口の3主徴が共通し極めて類似するが,テトラサイクリン系薬を投与した場合,つつが虫病は2日以内に90%が軽快するのに対して,日本紅斑熱は回復に数日を要することも多い.つつが虫病に比べ日本紅斑熱は重症化傾向が強いが,重症化の背景にはサイトカインストームが関与していると推測される.リケッチアやSFTSウイルスに対する日常診療での感染対策はアイガードやN95マスクを含む標準予防策の遵守であり,消毒にはアルコール含有消毒薬が有効である.

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© 2023 一般社団法人 日本環境感染学会
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