2026 年 41 巻 1 号 p. 64-68
手術部位感染(SSI)は医療関連感染の一つであり,特に人工物が使用される手術では患者への影響が大きい.
本研究では人工股関節(HPRO)のSSIサーベイランスデータから,手術中の感染対策の実践状況とその効果を検証した.比較データとして厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の2020年から2022年のSSIサーベイランスデータを用いた.HPRO27件に対し,「予防抗菌薬投与のタイミング」「体温管理」「手洗い」「インナーグローブのテーピング」「皮膚消毒」「ドレーピング」「グローブ交換回数」「インプラント取り出し」「創洗浄」「縫合糸」「ドアの開閉回数」の11項目について感染対策を直接観察し遵守率を測定した.
当院のHPROにおけるSSI感染率は2020年0%,2021年0.3%,2022年0.3%であり,JANISの同時期の感染率(0.5~0.6%)と比較して低値であった.観察した感染対策項目の遵守率は約90%から100%と高い水準を示した.観察した感染対策の各項目において高い遵守率が確認され,これが低いSSI発生率に寄与していると推察された.各感染対策を組み合わせた感染対策バンドルの実践と,科学的根拠に基づいた感染対策のアップデートが,HPROにおける良好な成績を維持する重要因子であることが示唆された.